箱根仙石原高原の奥座敷にある料理旅館。

部屋数全6室、数寄屋造りの隠れ家的宿。以前別荘だった建物で、約20年前から旅館として営業してるよう。

庭門の前、左手に『いちい亭』の由来となったいちい(一位)の木がある≫人気blogランキング



箱根外輪山を背景に、仙石原の広大な敷地に作られた、大箱根カントリークラブのクラブハウスのすぐ南隣にある(毎年「CAT Ladies ゴルフトーナメント」が開催されてて、今年も8月23日~25日に行われテレビ放映されてた)。

看板の手前を左に入ると、駐車場の奥に、庭門が見える。

駐車場に入ると、門から和服姿の女性が数人足早に出てきて、駐車の誘導をしてくれた。駐車し、車から降りると、笑顔で出迎えてくれて、お持ちしますと、車から降ろした荷物を持ってくれた。こちらにどうぞと、先導されながら、館内へ。

 

庭門を入り、敷石のアプローチを進んで行くと玄関がある。

いちい(一位)の木は、仁徳天皇の時代に、正一位の貴人が持つ笏がこの木で作られたことから、名がついたと言われてる常緑針葉樹。

玄関には、受付も帳場もなく、大きな花瓶&花が置かれてるだけ。ここで靴を脱いで(スリッパはない)、右手へと伸びる畳敷きの廊下から、宿泊予定の部屋へと案内された。



予約してたのは、本間12帖+次の間8帖+広縁+温泉露天風呂付きの和室。

石灯籠のある庭に面してて、広くて明るい。窓からは、庭木の向こう側に広がる、ゴルフ場の芝と木々、さらに箱根の山々が見える。

 

本間は、なだらかなアーチを描く天井に、菊花風の和風照明が点いてて、床の間には日本髪の美人画が掛かってた。和風モダンで優雅な雰囲気。

次の間には、黒いダイニング風テーブルが置かれてた。本間との間にある襖を収納すれば、 広い続き間になる。

広縁には、掘り炬燵のテーブルと壁面には三面鏡が設置されてた。

 
部屋風呂(温泉)左:檜内風呂
        右:陶製露天風呂

部屋には、お風呂が2つあった。

内風呂は、温かみのある檜風呂でフェラガモのアメニティが準備されてた。

その奥にある陶製の露天風呂は、信楽焼きのよう。円形で足をゆったり伸ばせるサイズで、硬質ながらしっとりと肌に馴染む。


抹茶&菓子(ウエルカムドリンク)

お部屋担当は、きりっとしたベテラン女性で、おしぼり、お菓子、抹茶を運んできてくれた。

お菓子は、夏みかんの牛皮で、ピールが入ってて爽やか。一口サイズで食べやすく、柔らかな苦みの抹茶とよく合う。

お茶を飲んで一服してると、お部屋担当の女性が、畳の上に衣裳敷きを広げて、その上に、浴衣と帯とを準備してくれた。今のお時間は、大浴場が空いてますのでどうぞと勧められたので、お風呂へ。

 
大浴場(貸し切り利用のみ)
 左:御影風の半露天風呂
 右:古代檜の半露天風呂

大浴場は大小2つあった。全6室という規模から、大浴場というほど大きくはないが、どちらも、部屋のお風呂より大きい。

別棟になってて、勝手口風の出入口で雪駄を履き、渡り廊下を15m程歩いていったところにある。貸し切り専用で、知らない人と一緒にならないので、部屋風呂と同じ感覚で使える。

大きい風呂は、古代檜の半露天風呂。ドラマ「華麗なる一族」(木村拓哉主演)の撮影で使われた。

古代檜とは、樹齢1000〜3000年の神木とも言える貴重な巨木。天然ヒノキチオールなどの精油分を多量に含んでて、入浴するだけで、森林浴と同じ効果がある。

仙石原は、標高700m程の広い草原にホテルや旅館、別荘などが点在してる。仙石原温泉もあるが、大涌谷や姥子から温泉を引湯してる施設も多い。

いちい亭は、姥子温泉の温泉を使ってる。姥子温泉は、開湯800年以上になる「箱根十七湯」のひとつ。足柄山の金太郎が枯れ枝で目を刺して見えなくなったとき、姥(うば)が箱根権現のお告げで温泉を発見、金太郎の目を治したという伝説がある。


ラウンジ

ラウンジは、20帖強の和室で、壁には日本画家、伊東深水(朝丘雪路の父)の画が掛かってた。

西一面に採った大きな窓から、庭とその背景にある箱根外輪山とが一体化したダイナミックな景色が望める。

 

テーブルの上には、冷たいビールやジュースとグラスが準備され、入浴後に自由に飲めるようになってる。

大浴場と部屋風呂をハシゴし、広縁で、雲のかかった箱根の山々を眺めながら一休み。遠くで鳴ってる雷の音を聞きながらくつろいでたら、いつの間にかうたた寝してた…。

そんなこんなしてたら、あっという間に、夕食の時間になった。

 

予め、ドリンクメニューから、夕食時の生ビールを注文しておいた。

■夕食(納涼懐石)


◎食前酒:山桃酒 +生ビール大(エビス)¥900
◎先付:とろろ寄せ、生うに載せ
◎前菜:西瓜メロン、うちわ冬瓜、丸十檸檬煮
    川海老艶煮、蓮根芥子和え、小茄子田楽
    黒枝豆

夕食は、次の間の黒いテーブルに準備された。料理内容を記した献立表が添えてある。

お部屋担当の女性は、料理について、1品1品説明してくれる。

運ばれてきた生ビールで乾杯してから、料理を食べ始めた。

前菜は、氷の上に置かれた蓮の葉の上に、7品が盛り合わされ、ほどよく冷たく、まさに夏の懐石。

西瓜メロンは、小メロンにゼリー&黒ごまを詰めて、西瓜に見立ててある。うちわ冬瓜は、冬瓜に切り込みを入れた竹串を開きながら刺してあって、ミニサイズなのに、ちゃんと団扇の形になってた。

川海老は艶よく、香ばしくて、蓮根芥子和えは、ダシを含んだ蓮根の歯ごたえがいい。小茄子田楽は、聖護院の茄子を半割にして焼き、甘からい味噌が載せてあった。丸十は、さつまいものこと。レモン風味がさわやかで、さつまいもとは思えない軽やかさ。

先付は、レンゲ型の黄色の器に盛られてた。

ゼリー寄せにした山芋の上に、生ウニと山葵を載せ、ダシがはってあった。滑らかなゼリーが、ぬめりのある山芋を包んでて、歯ごたえ&口あたりがいい。

料理はどれも手が込んでて、見た目に麗しい。視覚的、味覚的に刺激されて、食欲がわいてくる。


◎煮物椀:はもの葛叩き
     早松茸、梅白玉添え

煮物椀は、シルバーゴールドの光沢あるお椀で運ばれてきた。

蓋を取ると、湯気とともに松茸の香りが立ちのぼる。8月の旅行なので、松茸は期待していなかったので、とてもうれしい。

鱧は葛をまとってて、柔らか。梅風味のピンク色の白玉が添えてあり、すだち、松茸、柚が載ってる。

松茸は、まさに秋の香り。だしが軽やかで風味よく、塩分が控えめで上品に素材の味を引き立ててる。


◎向付:近海漁港の旬魚盛り、天城山山葵
    マグロ、こち、シマアジ

向付は、天然物の刺身3点盛り。色艶よく、見るからに鮮度がいい。

マグロは、中トロと赤身。トロは口の中でとろけ、赤身はあっさりとしてる。コチは、歯ごたえがあって、シマアジは、身が締まってる。飾り包丁が美しく、上質な山葵が、魚の甘さを引き出してる。

お腹いっぱいになるのでビールは控えようと思ってたのに、料理の美味しさゆえ、つい追加注文してしまった。


瓶ビール(中)サッポロ ¥800、エビス ¥900


 サッポロビールは、東海道五十三次の
 箱根湖水図の絵柄。
 これは、「箱根ラベル」の中瓶で、
 通年販売されてるそう。


サッポロ(株)が「箱根駅伝(=東京箱根間往復大学駅伝競走)」に、第63回(1987年)から協賛してて、その舞台である箱根町を盛り上げ、応援するために作った。「箱根ラベル缶」も販売されてるよう。

ラベルがご当地限定だと、気のせいか、ビールまで美味しく感じられて、何だか不思議。


◎焼肴:きす風干し、焼賀茂茄子
    生姜醤油添え

きすは、一晩風干しし、色よく焼いてある。香ばしく、しっぽも気にならず全部食べられた。賀茂茄子は、軽く揚げた後、焦げめを付けて焼いてある。揚げてあるのに油っぽさなく、甘くてジューシー。

まろやかで、ほんのり生姜が香る、生姜醤油をちょっと付けて食べると、味に奥行きが出る。


◎お凌ぎ:うなぎ飯むし、銀あん、実山椒

お凌ぎは、先付のあと空腹をしのぐ、ちょっとしたご飯物のこと。

小ぶりの小鉢に、トロッとした餡のかかった鰻と、鰻の下には、艶々の餅米が入ってて、作りたての熱々っ。

鰻は、厨房で裁いているとのこと。香ばしく焼いてあり、鰻の味が濃厚。餅米は1粒1粒立体的で、その粘りとモチモチ感が、しっかり鰻を支えてて、実山椒が、ピリッと味を引き締めてた。


◎合肴:黒毛和牛塩焼
    とうもろこし、満願寺唐辛子添え

合肴(あいざかな)は、焼物と煮物の間に出る料理。

黒毛和牛塩焼に、焼いた(素揚げ?)とうもろこしと満願寺唐辛子、朱色のソースが添えてある。

黒毛和牛は、1cm弱の厚みの肉が、ミディアム位に焼いてあって、とても柔らかい。とうもろこしと満願寺唐辛子は、甘さが増してる。

朱色のソースは、ペースト状にした満願寺唐辛子に醤油を加えて作ってあるとのこと。辛さの中にコクがある。和牛は塩が効いてるのでそのまま食べればシンプルな味で、ソースを付ければ、ちょっと複層な大人の味になる。


◎冷し鉢:夏野菜の煮凝り
     才巻海老、南瓜、小芋、はす芋
     いんげん、針茗荷、ふり柚

冷やし鉢は、ガラスの器に、涼しげに盛られてた。

海老&野菜が、ダシの効いたジュレで和えてあって、食感に変化のある涼しい煮物になってた。

才巻海老は、プリッとして、野菜は、南瓜:ホクホク、小芋:滑らか、はす芋:スポンジ状に穴が空いてて、シャキシャキ、それぞれの味と食感で味わえた。ふり柚がさわやかに効いてる。



ごはんは、織部っぽい重量感ある釜炊きごはんで、釜ごと運ばれてきた。

お部屋担当の女性が、サブテーブルのところで、釜の木蓋を取って、お釜の中を混ぜてから、お茶碗によそってくれた。木蓋を取ると、部屋いっぱいに炊きたてのごはんの匂いが漂う。


◎食事:釜炊き御飯、香の物
◎留椀:赤だし

ごはんは、ふっくら炊きたて。

赤だしは、鰹の芳醇ないい香り。苦み、えぐみなく、とても飲みやすい。今まで赤だしが苦手だったのがウソのよう。

香の物は、壬生菜、しば漬け、ごぼう、長芋、赤カブなど京漬物5点盛りで豪華。漬物好きの私にはたまらない。


◎水物:白いおしるこ +番茶

食後は、デザートとお茶が運ばれてきた。

白いおしるこは、ブルーベリーとパイナップル、ミントがトッピングされてた。

白い甘納豆(花豆)で作ってあるとのこと。見た目は、杏仁豆腐orプリンのようだが、食べてみると、あんこのような粉粉感があって、確かにおしるこ。冷たく冷えてて、練乳のようなクリーミーさがあって、洋風の珍しいおしるこだった。

■翌朝のお茶

緑茶、梅干し&わさび昆布

翌朝は、お部屋担当の女性が、朝食の前に、緑茶を運んできてくれた。

緑茶は少し濃いめに入れてあって、目と体が覚醒する感じ。塩分&酸味の穏やかな梅干しと、わさび昆布が添えてあった。

■朝食


・梅入り茶碗蒸し
・かますの一夜干し&だし巻き玉子
・揚げ茄子の胡麻味噌かけ
・ぜんまい煮 ・はくさい菜の煮浸し
・蒸野菜&玉ねぎのドレッシング
・ごはん、みそ汁、漬物 ・焼海苔
・オレンジジュース

朝食は、朱色の丸盆に準備されてた。温かい料理は、後から運ばれてきた。

茶碗蒸しは、梅干し入り。
艶やかで滑らかなで、まるで絹のよう。茶碗蒸し好きの私は、あちこちで、茶碗蒸しを食べてるが、これほど口あたりのいい茶碗蒸しは初めて。具は、梅干しだけで、極めてシンプル。なのに、今まで食べた中で最も上質で、ダントツ1位の茶碗蒸しだった。弟子入りして、その作り方を取得したいくらい。

かますは一夜干し。水分が飛んだ分、身が締まってて、魚の味が凝縮されてる。だし巻き玉子は、ふわふわで甘くなくて京風。

ぜんまい煮には、赤いコンニャクが入ってた。近江特産のこんにゃくで、鉄分を含んで赤くなってるとのこと。見た目は酸っぱそうなのに、食べるみると正にコンニャク。

揚げ茄子は、揚げたてジューシーで、胡麻味噌が滑らかに絡んでた。

蒸し野菜は、大きな土鍋から取り分けてくれた。煮崩れなく、野菜そのものの味と食感。シャープな玉ねぎドレッシングをつければ、さっぱりと味わえる。

焼き海苔は、艶と香りがあって上級品。みそ汁は、まろやか。漬物は4種+梅干しだった。

いろんな料理が、小さめの器に少しづつ盛られてて、品数多く豊かな内容になってた。



蒸野菜の土鍋、おひつ

蒸し野菜は、浅型の大きな土鍋で蒸してあって、蓋を開けると、蒸気&煙が豪快に立ちのぼった。



デザート:トマトのコンポート &コーヒー

食後、ガラスの器で、デザートが運ばれてきた。中サイズのトマト半割のコンポートで、ほんのり甘くて、トマト特有の青くささがない。言われなかったら、トマトとはわからないかも。飲み物は紅茶orコーヒーから選べる。

料理長は、京都で修行した人で、野菜も京都から取り寄せているとのこと。風味豊かなダシが、素材本来の味を引き出してて、見た目以上に手がかかってる。料理は月替わりなので、旬の素材を使った四季折々の料理が味わえる。

箱根は、数年ぶりだったが、とても洗練された料理旅館で、のんびり露天風呂で温泉につかって、じっくりと料理が楽しめた。たまにはこういう所に泊まると、日本の文化と料理の良さがしみじみと感じられる。

仙石原のすすきが黄金色に染まる季節に、是非再訪したい。おすすめ度8.0。

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料亭旅館『いちい亭』
 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原高原1246-431
 電話:0460-84-4111