東京上野のとんかつ店。初代店主が丸の内精養軒で修行した後、昭和22年(1947)に創業。現店主は3代目という。

間口2間程の亜麻色の2階建て。1階が店舗で、2階が住まいになってるみたい。平成21年に改築したよう。

JR御徒町駅から近い。上野松坂屋の北側から伸びるたぬき小路の中程にある≫人気blogランキング



小路の入り口の角には、1862年(文久2年)創業の『文久堂』という、タイル張りの漢方薬&まむし料理の店があった。蛇店に添って積まれてる籠(まむしを飼育している籠らしい)の脇を進んで行くと、路地の中程にとんかつ店がある。

ちなみに、『文久堂』は、戦前には300軒以上あったという蛇料理店。東京に現存するのは、ここと『救命堂』(台東区上野)、『蛇善』(台東区蔵前)の3店のみ。

マムシは、日本本土に生息する唯一の毒蛇で、滋養強壮、疲労回復、虚弱体質改善、冷え性などに効果があるといわれ、市販されてる栄養剤やドリンク剤などにハンピチンキという成分として配合されている。

上野界隈は、歴史が長いためか、よく見ると珍しい店があって面白い。



たぬき小路は、春日通りの、上野広小路交差点から20m東から北に伸びてる、車も入れない細い路地。普通に歩いてると気がつかない。入っても、店があるとは思えないほどで、奥にかろうじて、とんかつ、の看板が見えた。



店頭にメニューが掲示されてた。お手頃価格のサービスランチ¥800もあった。



幅狭の玄関引戸を開けて店の中へ。

縦長の長方形型の店内は、こぢんまりとしてて、左手が厨房とそれに面したカウンター席(5席)で、通路を挟んで、右手がテーブル席(4人×2、2人×1)になってる。2009年に改築したとのことで新しい。薄い草色の壁紙が貼られてて、少し和風で機能的な雰囲気。

厨房で働いてる、歌舞伎役者のようにこざっぱり(散髪したて?)とした50代位の男性が店主のよう。40代位の奥さんらしき女性が接客を担当してて、夫婦で切り盛りしてるよう。

いらっしゃいませと迎えられて、空いてる席に座った。全席喫煙可のよう。

品のいい普段着姿の年配の男性は、入店するとすぐにメニューも見ずに、厨房で調理してる店主に注文品を告げると、親しげな口調で雑談をかわしてて、近所に住む商店主のご隠居さんって感じで、長年の常連客っぽい。

 

メニューから、ロースかつ定食¥1700、サービスランチのかつライス¥800などを注文した。(サービスランチは、メニューに表示されてなくて、外壁の看板の下に表示されてた。)

正午を過ぎると、店内はあっというまに満席になった。外で待つのは寒いからと、店内で席が空くのをまってる客もいた。

注文受けると、店主は、厨房とカウンター席との境目のカウンターに注文品の皿を並べ、予め刻んであったキャベツをこんもりと盛った後、その脇にアイスクリームデッシャーを使って、ポテトサラダを半球形に順に載せるなどの作業をしていく。

やがて、注文のとんかつが揚がると、接客担当の奥さんに、出来上がる品を告げながら、手際よくキャベツ&ポテトサラダの載ったお皿に、盛付けていく。奥さんは、出来上がったとんかつと、ごはん、漬物を先に客席へと運んだ後、厨房に戻ってその都度みそ汁を準備して(温めてる?)、少し遅れて、みそ汁を運んでいた。

少し待って、料理が運ばれてきた。



 サービスランチ:かつライス ¥800

先にサービスランチが運ばれてきた。

ランチのかつは、水色の少し小ぶりのお皿に、千切りキャベツ、ポテトサラダを添えて、盛りつけられてて、これに、ごはん、豚汁、漬物が付いてた。

かつは、粗めのパン粉をまとった、厚さ7〜8mm程と少し薄めのかつ(ロースかつっぽい)で、きつね色よりも薄い揚げ色で揚げてあった。

肉厚はやや薄めながら、肉の断面を見ると、肉汁がうっすらと浮いてる。食べると、しっとりやわらかな豚肉が、一般のとんかつより、サクッと軽い食感の衣(パン粉)で包まれてた。

衣の色が薄いこと、衣が内側につやつやと光る油を含んでることなどから、170℃前後の油温で揚げてる一般のとんかつではなく、それより低い油温で揚げてるとんかつのよう。ただ、蘭亭ぽん多ほど、衣の色が薄くなく、衣に残る油が少なめなことから、『ぽん多本店』の創業者、島田信二郎が考案し、上野界隈に広がった低温とんかつ(厚い豚肉に衣をつけて、100〜120℃の油で時間をかけて揚げる)より、若干高い温度で揚げてるよう。

みそ汁は、作りたての風味で、出す直前にその都度温めててるよう。豆腐、三つ葉+豚肉(切り落としっぽい豚肉)が入ってて、シンプルな具ながらちゃんとした豚汁だった。



 ロースかつ定食 ¥1700

ロースかつ定食は、少し大きめのお皿に、キャベツ、ポテトサラダを添えて盛られてた。

ロースかつは、ほんのりピンク色の2cm程の厚みがあるロース肉を、衣がソフトに包んでた。肉断面からは、肉汁がじんわり浸み出してきてて、衣の一部がはがれやすかった。

衣の一部がはがれたが、食べると、しっとり柔らかくしかもジューシーで、全く臭みなく。一般のとんかつが衣が主役っぽいのに対し、この店のとんかつは豚肉が主役。肉が熱い分だけ、肉の繊細な食感がより明確に感じられる。最近の店とは違い、肉の味が重視した古典的なとんかつだった。

ポテトサラダは、完全にマッシュしてなくて、ところどころにつぶしてないいもが残り、ほくほく感のあった。加糖されてなく、マヨネーズの量もやや控えめに、にんじん、きゅうりを加えて作ってある、素朴なポテトサラダだからこそ、じゃがいもの味が感じられる、私好みのポテトサラダだった。

漬け物は、盛り合わせになってて、サービスランチより豪華だった。


 一口かつ定食 ¥1200

一口かつは、文字通り、一口で食べられるような、3〜4cmサイズの形のちょっとバラバラな、小さめのとんかつが6ヶ、盛り付けられてた。

肉は脂身がほとんどなく、やわらかで、ヒレ肉のよう。ジューシーさは控えめで、衣はちゃんとみっちゃくしてて、食べやすかった。



 ヒレかつ定食 ¥2000

ヒレかつは、大きめのお皿に盛られてた。

四角形の厚みのある肉で、俵型とまではいかないが、3cm弱ほどの厚みがあって、肉の中央部分がピンク色掛かってて、肉汁をたっぷり抱えてた。ヒレかつも、肉の味をしっかり楽しむためのもので、普通のとんかつ店とは違う。

低〜中温で揚げた、あくまで豚肉が主役の繊細なとんかつ。巷には飲食店が溢れ、とんかつだって¥500代から食べられる時代になった。しかし、豚肉、米、だけではなく、油などの材料も吟味した質のものを使えば、やや高価格になることは避けられない。

飲食チェーンなどでは、キャノーラ油を使ってることを自慢してる店が多い。「キャノーラ油」とは、エルカ酸の含有率を減らした菜種「キャノーラ」を原料とする。しかし、日本で使われるナタネの9割がカナダ産で、その8割が遺伝子組み換え(=GMナタネ)である。つまり、キャノーラ油は、遺伝子組み換えの食用油である。

健康にいいというイメージがあるが、キャノーラ油を使った揚げ物は、油切れが悪く、風味食感が悪いと私は思ってる。また、海外の実験によれば、遺伝子組み換え大豆でラット新生児の半数が死亡、とある。

この店で使うラードは、ナタネ油と比べ、酸化しにくく、210℃まで加熱しても劣化しないため、健康に良く、長時間の脂煮や揚げものに向く。

低温〜中温のとんかつで、肉にジューシーさがある分、衣の密着度が控えめな繊細とんかつであるため、しみ出てきた肉汁によって、下の方の衣がしっとりする。、会話も控えめに、黙々と食べるのがおすすめ。キャベツは、もそもそ感がなく、ふんわり&甘みがあった。チェーンなどとは違って、刻んだ後に水にさらしてなく、また機械切りではないためであろう。

サービスランチは、リーズナブルで、食べやすいが、この店らしいとんかつを食べたいなら、肉厚のある、ひれかつもしくは、ロースかつがおすすめ。

後から注文した人も、サービスランチのかつは、厚みがない分、早く揚がってて、先に注文したヒレ
やロースの方が後から運ばれてきてた。

テーブルには、とんかつソース、ウスターソース、のほか、トマトケチャップが準備されてて、カウンターには、岩塩、マヨネーズも置かれてた。店主は強要することなく、自分の好きにとんかつをたべてほしいと思っているのかも。気が楽でいい。狭い店なので、お昼だけでも禁煙の方がのぞましいかも。

この店は、路地裏にあり、華やかさはないけれど、流行にまどわされることなく、店の歴史を守っているという、地道な努力が感じられる。さすがは古くから上野で店を続けているだけのことはあり、チェーン店などのとんかつとは全く違う。目立たない場所にあるが、上野のとんかつの伝統を感じさせる店。おすすめ度は、7.3。

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■とんかつ『とん八亭』
 東京都台東区上野4-3-4
 電話:03-3831-4209
 営業時間:
 平日…11:30〜14:30
    17:00〜20:00(LO)
 土日祝…11:30〜15:00(LO)
 定休日: 月曜日
     祝日の場合翌日
 全席喫煙可