山形県鶴岡市の創業350年の老舗旅館。海岸線から温海川沿いに、約2km進んだところにある。

湯之里橋のたもとの純和風旅館。東館、西館、南館、離れから成る6階建てで、総部屋数78室。風格漂う、反りのある入母屋造りの玄関で、和服姿の中居さんたちに出迎えられた。

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温海(あつみ)温泉の歴史は古く、開湯1300年と言われ、672年(白鳳元年)に役小角(通称、役行者)によって発見されたと伝えられる。弘法大師の夢枕に童子が立ち、その示現によって発見されたとも言われてる。

源泉温度68度、毎分1300リットルと豊富な湯量を誇り、鎌倉時代にはすでに湯治場が設けられていた。川から流れ出た温泉によって日本海が温まったことが温泉名の由来とされる。古くから温海温泉と漢字表記されてたが、読みにくいことから、1977年以降ひらがな表記されるようになったが、昔からここを知ってる私としては、漢字の方が馴染みがある。

 

右手が受付フロントになってる広いロビーの奥には、日本庭園を望めるラウンジある。ここで生ビールやコーヒーが飲め、インターネットもできる。



ラウンジ脇にあるガラス扉から、外に出ると、池を中心に、もみじ、柳などの木々と石灯籠を配置した緑豊かな和風庭園になってて、池の中をゆったりと泳ぐ色とりどりの錦鯉、岸辺で毛繕いをする若いカルガモをすぐそばで見ることができる。

このカルガモたち、旅館のブログ(たちばな日記)を見たら、野生のカモで、この春この庭にやって来て、生まれた9羽とのこと。猫などの天敵がいないので、のびのびとした様子で過ごしてる。その愛らしい仕草は、見てるだけで心が癒される。



赤い絨毯敷の廊下の先にある、日本庭園に面した、木造平屋建ての離れ「環翠荘」の10帖和室+広縁+4.5帖和室(掘り炬燵式テーブルあり)の部屋へと案内された。

 

離れ(全10室)は、源泉掛け流しの檜の内風呂付きで、湯船はゆったり大きめサイズだった。専用箱庭が付いてて、外も見れるし、まるで個人用露天風呂のよう。

内風呂もいいが、温泉に来たので最初は1階の露天風呂付き大浴場へ。

ゆっくり湯につかった後、ラウンジで冷茶(無料)を飲んで涼み、売店でお土産品を見たりしてたら、あっという間に夕食の時間になった。



夕食は部屋食。大テーブルを下げ、1人づつにお膳が配置され、記名入りの献立が添えられてた。

◎夕食

 食前酒:謹製梅酒
 前菜:蟹身煮凍り、黒バイ貝旨煮
    甘海老糀漬け
 小鉢:庄内特産だだ茶豆 
   +お造り、台の物

お膳には、食前酒、前菜、小鉢、お造り、台の物が準備されてた。

冷蔵庫に準備されてたビールで乾杯した後、料理を食べ始めた。他の料理は、タイミングを見計らって、順に運ばれてきた。


お造り:鯛、鱸(すずき)の花造り、鮪、白海老

お造りは、笹の上に4種が盛り合わされ、大根で作った灯籠と、大根のツマの代わりに海藻みたいなカラフルな麺状のものが添えら、華やかな盛り付けになってた。

どれも鮮度よく、脂控えめで、あっさりとした味わい。白海老は、富山の白えびではなく、軽く湯通ししたようなクルンと丸まった大きめサイズので、海老らしいプリプリとした歯ごたえ。


台の物:ズワイ蟹のしゃぶしゃぶ

ズワイ蟹のしゃぶしゃぶは、ダシのはってある小鍋の下に固形燃料が準備されてて、これに火をつけて食べるようになってる。食べるペースがあるので、自分で火を付けて食べることにした。

楕円のお皿の上には、蟹脚3本+爪(はさみの部分)1ヶが、長ネギ、水菜、えのき、しいたけ1/2、麩、薄い餅、白滝(ガラスの器に入ってる)を添えて盛付けられてた。

沸騰したダシに蟹脚を入れ、しゃぶしゃぶし、身が白っぽくなったら取り出して、添えてあったポン酢を付けて食べた。むき身になってるのでとても食べやすかった。手を汚さずに蟹が食べられるので、蟹を食べるのに慣れていない人でも、これだったら大丈夫。


焼き物:庄内浜産、口細カレイの姿焼き

口細カレイとは、マガレイ(標準和名)のこと。口もとがすぼまっていて、おちょぼ口であることから、新潟や山形では、口細カレイと呼ばれてる。

少し小ぶりながら、身厚で、香ばしく焼いてあった。身は、ほっくりとしてて、クセなく食べやすい。


蒸し物:里芋利休蒸し、もずく銀餡かけ

里芋利休蒸しは、直径4〜5cmの丸い団子風の料理で、とろみのある餡が掛かってた。

箸に挟んで持ち上げてかじってみると、白ごまの中は、もっちりとした里芋だった。一旦蒸して、マッシュ状にしてから丸めたようで、滑らかで密度ある食感に仕上がってた。

見た目より、重量感があって、全部食べたら、お腹にずっしりきてしまって、半分だけにすればよかったと思った。もう一回り小さめサイズでもいいかも。


蓋物:活あわび酒蒸し、あおさ銀餡かけ

活あわび酒蒸しは、蓋付きの大きめ浅鉢で運ばれてきた。

蓋を開けたら、しいたけ、長ネギ、きぬさや、人参、豆腐の向こう側に、中くらいのサイズのあわびが丸ごと(殻付き)入ってた。

鮑は、食べやすいよう5ヶ程にカットしてあった。鮑を1切れ口に入れると、ムッチリ弾力があって、あおさ入りの餡と絡んで、貝のうまみとほのかな磯の香りが口の中に広がる。柔らかながら噛みごたえもあって、高級食材の鮑をしっかり堪能できた。


強肴:山形牛サーロイン香味焼き

山形牛サーロイン香味焼きは、ミニトマト、じゃがいも、ブロッコリー、藻塩を添えて、洋皿で運ばれてきた。

山形牛のサーロインは、ミディアムのちょっと手前くらいのちょうどいい加減で焼き色を付けて焼いてあった。キメの細かい肉質の牛肉で、脂が溶けるように柔らかく、とてもジューシー。甘しょっぱい和風ソースをつければまろやかに、藻塩をつければシンプルに、肉の味わえる。

旅館の肉料理は、ミニコンロで、客が自分で焼いて食べる料理として出されることが多く、宿としては手間もいらないのにインパクトのある一品になるが、上質な牛肉は焼き加減によって、おいしくもまずくもなる。こうやって、最もいい状態で調理した料理が温かい状態で運ばれてきて、食べることができるとは、何とも贅沢なこと。

ここまでくると、けっこうお腹がいっぱいになってて、他の料理を控えめに食べておけばよかったとちょっと後悔した。



 食事:庄内産はえぬき
 香の物:地野菜の浅漬け




ごはんは、おひつで運ばれてきた。蓋を開けると、湯気がたって、炊きたて熱々の状態だった。これをお茶碗によそって、サーロイン香味焼きと漬物をおかずに食べた。ステーキにも、パンではなく、やっぱる炊きたてごはんがよく合う。

漬物は、なす、きゅうり、大根、人参の4種盛りで、彩りよかった。


留椀:庄内浜産、西貝汁

銀色のお椀で運ばれてきた留椀は、ニシ貝のみそ汁だった。

凹凸のある巻貝が、7ヶ程入ってた。

見栄えは悪いが、みそ汁には、貝のダシがしっかり出てて、マイルドでコクのあるみそ汁になってた。酒田のルポットフーでも、ニシ貝を食べたが、この地域の特産品らしい。みそ汁を飲んだ後、爪楊枝を使って、ニシ貝の身を食べた。小さいのに、臭みなく、意外に上品で濃厚な味だった。


水菓子:庄内砂丘メロン

食後には、メロンが運ばれてきた。果肉がしっかりしてるのに、糖度が高く、追熟メロンではなく、完熟メロンって感じ。昨今、メロンと言いながらも、瓜の味しかしないものが多く出回っているが、ちゃんとメロンの味がした。

夕食の全体的な印象としては地味な感じ。しかし、魚貝類、肉類は、上質でそれぞれ量がたっぷりある。山形の人によくある演出が上手ではないためのよう。温泉旅館だと見た目は派手だが、野菜系が多くてあまり食べたくない品ばかりだったりすることもよくあるが、ここの夕食はよく見ると食べたい品が並んでて、肉や魚が好きな男性でもしっかり満足できる内容。



Aセット:日本酒(純米酒8勺)+珍味1品 ¥1050
(日本酒)出羽ノ雪、生酛純米酒
(珍味) ほや味噌粕漬

お部屋に置かれてた、旅館案内に載ってた、庄内の地酒(グラス1杯、8勺)+珍味のセットを注文した。日本酒は「出羽ノ雪」4種のグレードから、珍味は3種から選べる。それぞれ単品で注文するより、お得なセット。

「出羽ノ雪」は、山形県鶴岡市の約370年の歴史のある老舗酒蔵「渡會(わたらい)酒造」で作られてる、日本酒の銘柄。2001年以降、全国新酒鑑評会で金賞を7回受賞している、酒造りには定評のある酒蔵。

日本酒は、4種から、木酛純米酒を、珍味は3種から、ほや味噌粕漬を選んだ。

現在の日本酒造りでは、人工的に培養した乳酸菌の使うのが主流だが、蔵の中や空気中に生息する天然の乳酸菌を、酒造りに利用するのが、「生酛(きもと)造り」で、たいへんな手間と、高度な技を必要とする、最も伝統的な日本酒の造り方。

「出羽ノ雪」生酛純米酒は、ヨーグルトのような酸味があり、すっきりした純米酒で、古典的な技法なのに洗練された味わい。

ほや味噌粕漬は、独特の食感と風味で、これぞ逸品。



朝起きると、部屋の窓のすぐ近くまで、カルガモたちが、池を泳いでやってきて、岸辺で潜った後、岸に上がって、列をなしてテクテクと歩いて行くのが見えた。

◎朝食


朝食は、2階広間に設けられた朝食会場で食べた。

朝食会場に行くのは面倒かと思ったが、起こされず部屋でのんびりできるので、意外によかった。

 

手書きのメニュー表が付いてて、地味めな印象だが、実がしっかりとってあり、旅館で食べる料理が少ない子供たちも食べる品が多い朝食だった。

有名な老舗の温泉宿だが、山形らしく極めて控えめ。最近は演出の華やかな温泉が多いので、ちょっと目立たないが、山海のおいしい物が豊富にある新潟の人が、充実した料理を食べるために反復して訪れる温泉。一見派手さはないように見えるが、質、量ともに充実した料理で、湯質の良い豊富な湯量の温泉で、古い日本人の心というべき居心地の良いもてなしが受けられる歴史のある上品な宿。古来より多くの人に愛されてたのも納得。

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温海温泉『たちばなや』 山形県鶴岡市湯温海丁3
 電話:0235-43-2211