浅草の蕎麦の老舗。雷門から150mほど南の道路沿いにある。

神田薮、池之端薮とともに薮御三家の1つとして、また、池波正太郎など、多くの文化人が通ったことでもよく知られ、ここの辛口のそばつゆは、美味しんぼにも掲載されてる。

茨城ばかり食べ歩いてると、東京の蕎麦も食べたくなって行ってみた。≫人気blogランキング



神田薮の創業者:堀田七兵衛の三男が、大正2年(1913年)に暖簾わけしてはじめた。

ビルが建ち並ぶ通りに、谷間のようにして建ってる、鄙びた風情の木造の2階建てで、何ともいえない懐かしい感じ。

関東大震災と東京大空襲でほとんど焼け落ちた浅草には、古い町並みは残っていないけれど、下町らしい人々の賑わいの中に、日本の生活、文化が感じられる地域。そんな地域にあるからこそ、昔のままの姿形で営業していられるのかもしれない。

店頭には、灯籠、シュロ竹、笹などがあしらってあり、軒下には『薮』の文字の入った看板が掲げられてて、昭和の面影が感じられる店構え。






小ぶりの暖簾をくぐり、引き戸を開けて中に入った。

店内は縦に長い長方形型で、左半分が6畳+3畳の小上がり、右半分がテーブル席(奧から4人用、6人用×2が1列に置かれてる)になってて、奧には、広めの厨房とその左横にコンパクトな帳場があった。

テーブル席の奧の方には菊正宗の樽が置かれてる(日本酒はこれのみのよう)。

直射日光が入ってこない店内は、日中でもほの暗く、電球っぽい灯りがともってて、テーブルが置かれてる土間は、丸砂利&コンクリート敷きで、昔ながらの日本家屋のらしい風情。絵や額縁がかざってあるものの、テーブルや椅子など調度品はあくまで簡素で、庶民的な雰囲気。

厨房前に、50〜60代位の白い調理着&三角巾を着用した女性が数人、手を前で組んで立ってて、いらっしゃいませと迎えてくれた後、空いてる席に誘導してくれた後、コップでお水を運んできてくれた。

 

テーブルには、メニュー、調味料など何も置かれていなかった。

壁に掲示してあるメニューから、焼海苔¥650、ざるそば¥650、天ざるそば ¥1600、鴨南ばん¥1700を注文した。

接客係の女性は、上品で丁寧でそつのない言葉使いでやさしく、テンポよく対応してくれた。


 焼海苔 ¥650

焼き海苔は、折りまげると、音をたてて割れるくらい、パリっとしてて、出す直前に火で炙ったものかも。海苔の風味が新鮮で、ほんのり塩分含んでて、もしかしたら新のり?


 ざるそば ¥650

ざるそばは、ほんのり茶色のそばが、ひっくり返した笊(ざる)の上に、広げるようにして盛り付けてあった。

幅2mm位にきれいに揃ってるそばは、つやつや光ってて、水水しい。箸で手繰(たぐ)りよせて持ち上げてみると、驚くほど長く(50cm以上)て、箸を持ってる腕をうんと上まで挙げなければ、そばの端が持ち上がらない程だった。

そばは、固くなくて、もっちりした歯ごたえで、氷水などによるひやっとした冷たさがないので、そばの風味が柔らかに伝わってくる。

そばつゆは、口に含んだ瞬間はまろやかなのに、その直後、シャープに塩分が広がる、張り&強さのある濃い口タイプのもので、醤油・甘さ(みりん)・だし(かつお)がお互いに溶けあうように一体化してて、どれも突出することなく、1つの味となって共存してるって感じ。

薬味は普通に、わさびと長ねぎだったが、普通の店とは違ってた。なめらかにおろしてあるわさびは、青くささがなく、きれいに薄切りしてある長ねぎは、揃ってて(水にさらしてない?)えぐみなくやさしい風味だった。

手繰って食べた後、ざるの上にわずかに残ってた数本を、割り箸のエッジの部分でつかんで、きれいに平らげた。


 天ざるそば ¥1600

天ざるは、そばが塗りの器によそってあって、ちょっと高級感があった。
天ぷらは、小ぶりの海老天(さいまき海老)4つ+ししとうだった。海老はしっぽまで殻を剥いてあるので、食べやすかった。

上質の油で揚げてあるので、繊細な花を散らしたような衣は、サクッと油ぎれよく揚がっていた。


 鴨南ばん ¥1700

鴨南ばんは、小さめの茶色の丼に盛り付けてあって、熱々の作りたてだった。

ざると同じように、そばの量は控えめだけれど、肉(厚切りの鴨肉4ヶ、つみれ1ヶ)にがたっぷりはいってて、ボリューム感がある。

そばつゆは、まろやかな甘さがと風味抑え気味なだしが、鴨の上品な味を引き立ててる感じ。表面に、浮いてる、きらきら光る細かい油は、油っぽくないのに、コクがあって、鴨ならでは。

そばは、表面に穀物らしいうっすらしたぬめりがあって、ほっとするようなやさしくたおやかな食感。なのに、切れることなく、充分すすれる。

つみれは、粗挽き鴨肉で作れてて、箸で切り分けられない程、しっかり身がつまった野性的なつみれで、そばつゆの中に鴨風味を生かすべく、存在してるよう。厚切りの鴨肉は、火が入りすぎてなくて、中央部分の肉がまだ赤くて、柔らかな食感だった。

ねぎは、10cmと長めの縦切りされてて、食べる時にとまどったが、食べてびっくり。えぐみは全くなく、シャキシャキした歯さわり中に、ねぎらしい甘みが感じられる。

鴨、ねぎなど、食材の特徴をあますことなく丼の中でみごとに調和表現してるって感じ。


 そば湯

厚手の土瓶には、そば湯がたっぷり入っていた。

厨房は、責任者の男性を含めて3人位で切り回してて、接客係の女性3人(暇な時は立位で客席の方を見守ってる)、帳場では店主らしき男性がそろばんで計算していた。

客の動きを中心に、接客係、厨房が連携して動いてて、都会の老舗の繁盛店ならではの動き。

いろいろ注文すると、頃合いを計って、順番に料理を運んできてくれる。

客が大盛りを注文すると、接客かかりの女性が、大盛りは置いていない由をやさしく伝えてた。

茨城では、フレッシュな蕎麦自体の味わいが楽しめる蕎麦店が多いが。この店は、そば自体の風味は茨城の店より軽めだが、料理そのものの完遂度は比較しようもないくらい洗練されてて、さすが蕎麦を伝統の日本の職としただけのことはある感じ。

この店のそばつゆ、鴨南ばんをモデルに真似て作っていると思われる店が、茨城にいくつか思い浮かぶ。

形ではなく、食に対する素養や真摯な態度こそ見習うべき。

ビールを飲んでた人も、蕎麦を食べ終えるとさっさと帰っていって、混んでる時間帯に長居するような無粋な客はいないみたい。

どの料理も一見ありふれた蕎麦だが、歴史と文化がひけらかすことなくさりげなくしっかり入ってる。はやりすたりの多い世の中で、おごることもなく上質の食材を用いて調理してるよう。老舗とは、古いからではなく、こういった地道な作業を長年の積み重ねた蓄積と信頼の賜物なのかも。この店に行かずして江戸の蕎麦を語るなかれ、というのは頷ける。おすすめ度は、7.9。

■『並木薮蕎麦』
 東京都台東区雷門2-11-9
 電話:03-3841-1340
 営業時間:11:30〜19:30
 定休日:木曜日

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